この物語は、夫が妻の傘下という、かかあ天下を描きました。作家志望の友人との関係も面白くなっています。

『いいなり』 のりたか著作
静岡の清水に住む岩田益男は製缶工場に勤めて十二年。三十九歳である益男は十歳下のわがまま妻、真由美には手を焼いていた。結婚から八年になるが子供はいない。真由美はパートなどにも勤めない。夫の収入がよく、多少の家事をする以外はなにもしない妻だった。過去に勤めていたが、会社では嫌われていた様子。益男は働き者でやせているが、真由美は背が低く太っている。容姿を気にしているからか、外出時は益男と一緒だった。益男は学生時代からおとなしく、友人も少ない。唯一中学時代の友人、高見憲三とは今も連絡はする。高見は過去に漫才師や俳優に挑戦するが実らなく、現在は作家を目指すフリーターの独身男性である。
四月上旬の金曜日、高見から電話を受け近況報告をする。高見の応募作品が二次通過をしたと聞き驚いた。益男も建て売り住宅を購入した話しをする。益男は借家でよかった。が、真由美は住宅に住むのが夢であった。高見は一度驚いた。だが内容を聞いて耳を疑いだした。真由美の両親が住むという。どう考えても益男が買った新居。アパートに独り住む益男の母を受け入れるのが筋。高見は、断らない益男とずうずうしい真由美へ無性に腹が立った。
翌日、高見と益男は新居で酒を飲むことになる。話題は新居に真由美両親が来ることだった。当然反対の高見はヒートアップになり真由美を罵る。益男も酔いで本音を語った。ふたりで真由美のことを『豚女、豚、豚』と連呼する。だが真由美はふたりの会話が気になりこっそりと来ていた。話を聞くとショックは隠せない。物音で存在がばれて泣く始末。高見は本人を前に罵った。それをみていた益男は妻である真由美を哀れと思い、高見を叱り強引に帰した。侮辱された真由美は、過去を振り返り反省。やさしい益男が一番と、その夜ふたりは愛し合う。子供も作ることになり、今後の岩田家に期待する益男。これは高見のおかげでもあることから翌日には逆に謝り、その趣旨を伝えた。高見は驚き、自分の暴言が協力したことで、また益男との縁がつながった。
世の中にこんな男性はいますか。より愛が深まったという落ちでした。
ブックウォーカー
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では次回へ…
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