こんにちは。

3年前、試しに書いたちびまる子ちゃんの脚本です。それを2017年6月に応募しました。
1週間後、さくらプロからの通知。結果は落選でした。
ゴールデンウィークを自宅で過ごす方々、よろしければ読んでみて下さい。


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『まるこサイフをひろう』

 

 

      まるこは自宅の玄関を開けた。

      「ただいま!」

      まるこは学校から帰ると約束したたまちゃんちへ遊びにいくことになっていた。いそいそと持っていく漫画本をそろえる。母から、宿題やってからにしなさい、を無視して自宅を出る。

      道を歩いているとなにやら物体を目撃する。だんだん近づくと、おばあちゃんが持つようながま口サイフを確認する。

(まるこ)   「これは、さ、さ、さいふ……」

      まるこはまわりをキョロキョロし顔をニッとする。そしてしゃがみこみ中身を確認。開くと三千円と百円や五十円など。まるこはいくらあるか数える。

(まるこ)   「三千五百六十円ある」

      つぶやくと、そのとき悪の妄想が出る。

(悪のまるこ) 「へへへ、これだけあればももえちゃんのレコードやみつやでお菓子をいっぱい買える」

      まるこは余裕の悪顔をし想像をする。そこへ善の妄想が悪を押し出す。

(善のまるこ) 「ダメダメ、サイフ落とした人はとっても困っているよ。もしかしたらこれが全財産だったり、遠くから来ていて、いまごろおまわりさんと困り果てているかもしれない。いますぐ交番に行きな」

      悪が現れ、善をのっとる。

(悪のまるこ) 「交番に届ければお菓子もレコードも買えないじゃんか。金持ちになりたいならポケットに早くしまいな!」

(善のまるこ) 「おい、まるこには困った人を思う気持ちがあるんだろ? それなら助けてやりなさい」

(悪のまるこ) 「そんなのに惑わされるな!」

               と、まるこは善と悪と戦っていた。そのときハマジの声。ブー太郎といる。まるこはうしろ姿でしゃがんでいる。

(ハマジ)   「あれ、さくらじゃないか?」

      まるこはギクッとする。

(ブー太郎)  「そうだなブー、おーい、さくらなにしてんだブー」

(まるこ)   (あの声はハマジとブー太郎だ。こんなところを見つかると、山分けしようぜ、となるかもしれない。ここは仮病を使うしかない。サイフをポケットに忍ばせる。でもサイフはポケットにすべて納まらない)

(ハマジ)   「なにすわってんだ」

       二人が近寄る。ハマジたちのうしろに野口が門を曲がってきた。だが急いで門へ戻り、隠れてみる。

(まるこ)   「あー、ハマジにブー太郎、おなかが痛くなって、少し休憩だよ。でもすわっていたら少しはよくなった」

      まるこはサイフを見つからないようにポケットからおなかをさする。

(ブー太郎)  「大丈夫かブー」

(ハマジ)   「保健室でもいくか?」

(まるこ)   「なんでいまさら学校の保健室へ行くのさ!」

       と怒り気味。演技を忘れる。

(ブー太郎)  「さくらけっこう元気だブー」

(まるこ)   といわれ仮病演技にもどる。

      「少しよくなったからね、じゃ、家に戻るよ」

(ハマジ)   「おー、気をつけろよ」

(まるこ)   「じゃあね」

      危機を脱出し、安堵のため息を吐く。

      サイフをポッケから出すと中身をみる。悪の妄想がよみがえる。でも善の心もぶつかり、首を左右に振る。

      「あーあ、たまちゃんへ聞けば絶対交番へ届けなよ、というだろう。たしかに困っているかもしれないけど、こんな大金があればいい暮らしが……」

      と、つぶやきお菓子三昧の空想がわく。

      とりあえず交番には行かず、たまちゃんちへ。

      向かう途中、たまちゃんと山分けできるならそれで満足と想像する。どっちかというと悪心が強い。

      そんなこと考えたまちゃん家につき、玄関へ入る。

(まるこ)  「たまちゃん」

      まるこはサイフを隠すためポケットに手を入れている。

(たまえ)   「あっ、まるちゃん、どうぞ入って」

      まるこは少し冴えない表情で入るため、たまえは気づく。

(たまえ)   「どうしたの、なんかおかしいよ。あっ、わかった、お母さんにわたしっちくるから勉強しろといっぱい言われたでしょう?」

      部屋へ行くまで、たまえは明るくいう。

(まるこ)   「うん、それもそうだけど……」

      まるこはたまえの部屋に入ると、

      「じつはこれなんだよ」

      がま口サイフを出す。たまえは意味不明でハテナ状態。

(たまえ)   「サイフだよね、買い物頼まれたの?」

(まるこ)   「いやいや、それが実は拾ったんだ。それでね、たまちゃんと話しがあって……」

      少しまるこは悪顔で。たまえは平常心。

(たまえ)   「なんの話? でもサイフ拾ったなら交番にちゃんと届けないとね」

      たまえはサイフをみつめる。まるこは少しがっかりする。

(まるこ)   「やっぱたまちゃんには悪が心にいないんだな。まあそれがたまちゃんなんだけど」

      と、つぶやく。たまえは首を傾げる。

(たまえ)   「だってこのサイフ落とした人きっと困ってて交番に行ってると思うから、まるちゃん届けよう!」

      まるこの両手をとり正義感強い表情になる。まるこの表情も正義感あふれてくる、が……。

(悪のまるこ) 「このチャンスをむだにするのかまるこ。貯金箱にこ

んな大金入ってないぞ!」

      正義感から悪人顔へ。たまえは気づき怒る。

(たまえ)   「ダメダメまるちゃん。正義の顔になってくんないと、知らない!」

     たまえはそっぽを向き、そして「そんなこと考えないで」と心で祈る。

(まるこ)   まるこはやっぱと……、たまえの表情をみて悪人まるこを反省する。

      「たまちゃんごめん……」

      そこへドアをノックと同時にたまちゃん母がお菓子と

飲み物を持ち登場。

(たまえ母)  「まるちゃんどうぞ。ん? おサイフ、どうしたの?」

      まることたまえをうかがう。まるこもぞもぞ。

(たまえ)   「まるちゃんがわたしっちくるときサイフ拾って交番に一緒に行ってだって!」

(まるこ)   なんとそこまでいわないでと思った。とりあえず言葉をいう。

      「はい……」

(たまえ母)  「そうなの、早く届けたほうがいいわ。お菓子食べたら行ってきましょうね」

      たまえの母はにっこりして部屋を出た。

       まるこはジュースを飲んでるとき、母がかぜで寝込んでるとき、おじいちゃんとスーパーへ買い物にいったがサイフを落としたことを思い出す。おじいちゃんと探しまくり、交番にも届けたが結局サイフは出てこなかった。そのときのおじいちゃんの目からは涙が出ていたことだった。まるこはそのことを思い交番へ行く決心がかたまる。

(まるこ)    「よし、たまちゃん行こう!」

       まるこは声高でいい、強気の表情をする。

(たまえ)    「まるちゃんどうしたの、交番は行くよ」

       首を傾げるたまえは外出の準備をする。まるこは大声で話したことに恐縮し反省する。わざわざ宣言しなくてもよかったと。

       二人は交番へ向かい歩いていた。夕方なので買い物の主婦や新聞配達など通る。小学一年くらいの男の子供が泣きながらおばあちゃんといた。まるこたちは歩きながら不思議に見た。通るとき声が聞こえる。

(おばあちゃん) 「もういいよ、まさし。交番に届けてあるかもしれんからね」

(子供)     「ごめんね、おばあちゃん、ごめんね」

       子供はしくしく泣きながらいう。

(まるこ)    「たまちゃん、もしかすると!」

       たまえも同時にまるこをみる。そのときの顔は二人とも交番へ行こうと宣言したまるこの表情になる。

       まることたまえは、おばあちゃんのもとへ。

(まるこ)    「あの、どうしたんですか?」

       おばあちゃんと子供が同時にみる。

(おばあちゃん) 「いえね、まさしに買い物というか自動販売機のお茶を頼んだんだけどね、途中でサイフを落としたみたいで。小銭だけ渡せばよかったんだけど、そのままがま口サイフのまま渡したものでね、ちょっとお金が入ってるし困ってしまい交番へ行こうとしてたのね」

       おばあちゃんはため息をついた。

(まるこ)    「これですか?」

       サイフを出すと子供が目を見開いた。

(子供)     「あっ! おばあちゃんのサイフ」

(おばあちゃん) 「あれ、まあ」

(まるこ)   「ちょっとまえにあそこで拾って、いまから交番へ行こうとしてたんです」

       たまえとにっこりする。

(子供)     「やったー、あった、あった!」

       と、飛び跳ねる。

(おばあちゃん) 「はー、交番に届けても出てこないと思ったもので。よかったわ」

       まるこはサイフを渡す。おばあちゃんは中身を確認する。電柱の影でなぜか野口が見ている。

(たまえ)    「よかったですね、まるちゃんが見つけてなかったら変な人にとられて交番には行かないと思いました」

(まるこ)    「えへへ……」

微妙な汗をだす。実際、悪のまるこはサイフを届けないつもりでいた。でも善のまることたまえとで悪がいなくなった。

(おばあちゃん) 「ありがとうね、じゃー、みつやさんでもいきますかね。ジュースやお菓子でも食べてね」

(まるこ)    「いいんですか?」

       泣いてた子供も喜ぶ。まるこはとてもいいことをしたという顔になる。

       そしてみんなでみつやへ向かう。

       みつやに着くと野口がいる。

       「予定通り来てよかった。キュキュキュキュ」

       独り言をいう。

(たまえ)    「あれ、野口さん」

       たまえとまるこは野口をみる。

(野口)     「ハマジとブー太郎もいるよ」

       二人は表をのぞく。

(ハマジ)    「おお、さくら、腹痛いじゃなかったのか?」

(ブー太郎)   「そうだブー」

(まるこ)    あせった顔になり、

       「いやいや、薬を飲んだら治ったんだ」

       と、おばあちゃんやたまえを気にしながらいう。

(たまえ)    「まるちゃん、お腹痛かったの?」

       たまえとおばあちゃんたちはまるこをうかがう。

       まるこは、はまじたちにサイフを拾ったのを話していないため、うそをいったことで汗が出る。

(ハマジ)    「さっき座ってお腹痛いといってたよな、さくら」

(ブー太郎)   「いったブー」

       ふたりはアイスを食べながらつめよる。

(たまえ)    (もしかするとまるちゃんは、わたしっちに来る前にはまじたちに会い、サイフ拾ったことになにかぶつぶついわれるためにお腹痛いとうそをついたのかも。だから焦っているのかも)

       そう思ったたまえは、はまじたちの前で「ダメー」とつめよって防いだ。

(たまえ)    「はまじとブー太郎たちに会ったあと、道ばたでサイフを拾い、わたしっちで薬飲んで交番に行くとこだったの」

(おばあちゃん) 「そうそう、そのあとに落としたわたしたちに会ってね。それでお礼でお菓子をごちそうに来たのよね」

       おばあちゃんはまるこの頭をなでる。

(まるこ)   「そうだよ、だからあんたたちに会ったときはお腹が痛かったのよ!」

       と、一転し凄みをきかせる。たまえはまるこにウインクした。まるこは、ありがとう、と心で思う。

(ハマジ)    「なんだ、そんなことだったのか。さくら、おまえけっこう偉いな」

(ブー太郎)   「さくらがな、やるなブー」

まるこは少しガクッとするが、ハマジたちに褒められ、それでも満足の表情をする。

(野口)     「さくらさん、ほんとうに交番へ行こうとしたのかな? キュキュキュ……」

(まるこ)    冷や汗をかいていう。

       「行こうとしたよ、なんで信じてくれないのかな」

       たまえの様子をうかがう。たまえも少し焦っていた。

       でもまるこを仲間と思い強く決心する。

(たまえ)   「野口さん、言っていいこととわるいことがあるよ。まるちゃんがそんな卑怯なことするわけないじゃん」

       たまえは怒鳴った。野口は一瞬びびるが、すぐになにくわぬ顔でいた。

(まるこ)    (たまちゃん、そんな真剣にいわないでいいよ。ほんとうは野口さんのこと当たってるんだし)と思う。

       とりあえず、「そうだもん」と弱々しく返事する。

(野口)     「ふん、まあいいよ。わたしはさくらさんのことはよくわかるし……」

       と、意味不明なことをいった。まるこは少し不気味がる。

(まるこ)    なぜわたしのことわかるっていうの、と疑問に思った。そこへおばあちゃんが割る。

(おばあちゃん) 「さあさあ、もうサイフを見つけてくれたんだし、みんなでお菓子を食べましょう」

(ハマジ)    「ぼくっちもいいですか?」

(おばあちゃん) 「みんなに買ってやるからね、ただし百円以内よ」

       ハマジとブー太郎は手を上げて喜ぶ。まることたまえもはしゃいだ。野口は当然のように真っ先にお菓子を物色する。

       それを見たおばあちゃんと子供、まるこたちはあ然とする。

(ハマジ)    「おれもっと」

       ハマジが続くとブー太郎、まることお菓子を物色する。たまえは遠慮気味にお菓子を探る。

(たまえ)   (まるちゃん、変な考えしなくてよかったね)と思う。

       みつやのまえを花輪家の高級車が通る。

(花輪)     「ヒデじいストップして」

(ヒデじい)   「はい、おぼっちゃま」

花輪は窓を開けた。

(花輪)     「へい、ベイビーたちお菓子を買っているのかい?」

       さくらたちは一斉に花輪をみる。

(まるこ)    「花輪君だ」

(ハマジ)    「買ってるというか、さくらがおばあさんのサイフを拾ったから友だちということで、ぼくらにもお菓子を買ってくれてな」

       ブー太郎に向く。

(ブー太郎)   「そうだブー」

       ヒデじいがおばあさんを見て驚く。

(ヒデじい)   「もしかして、上野様ではないのかな?」

       と、つぶやく。

(花輪)     「ヒデじい、あのかたをご存知なの?」

(ヒデじい)   「はい、五年まえほどに通った社交ダンスのメンバーで腰を痛めて、お見舞いに行ったこともあります」

       ヒデじいは照れながら話す。花輪は事情を察した。

(花輪)     「そうなの、それではいろいろ話しもあることだろうし、あのベンチでジュースでも飲みながら話しては?」

(ヒデじい)   「おぼっちゃまがそうおっしゃるならお言葉に甘えます」

       ヒデじいは車から降りるとおばあちゃんに声を掛け     た。

(おばあちゃん) 「あら、ヒデさん」

       と、笑みを浮かべた。ヒデじいはおばあちゃんをベンチに座らせた。花輪も車からみつやに行く。

(まるこ)    「ちょっとちょっと、ヒデじいとおばあちゃん、いいなかじゃん」

(花輪)     「うーん、社交ダンスの友だちというか、好きなのかな」

       野口、ハマジ、ブー太郎はまったく気にしていない。

(たまえ)    「きょうはなんか変わった日になったね」

       まるこへ向ける。

(まるこ)    「そうだねー、いい日だねー。いーい日、旅立ちー」

       と、調子にのり山口ももえの「いい日旅立ち」を歌う。

(野口)     「たしかにいい日だね、キュキュキュ……」

       お菓子を袋につめながらいう。みつやの時計を見ると突然声を上げた。

       「まずい、四時からコント55号の再放送だった」

       野口はお菓子を素早く元に戻し焦って店を出た。

(ハマジ)    「ほなみ、野口のやつ突然どうしたんだ?」

(たまえ)    「コント55号がやるんだって」

(まるこ)    「そうだった、四時からやるんだった」

       さくらは気づきお菓子をとるかコントをとるか悩む。でもお菓子にはかなわなかった。これがドリフだとお菓子をあきらめるのだった。

(花輪)     「さくらさん、車にテレビがあるからみてもいいよ、ベイビー」

(まるこ)    「えー、車にテレビがあるの?」

(花輪)     「海外の連続ドラマを移動中でも見たいからね」

(まるこ)    「すごいなー」

       と、高級車をみつめる。まるこは早めにお菓子を詰めてたまちゃんに渡す。そして車へ走り勝手に乗る。

       「小さいけど仕方ないか」

       チャンネルを換えてコント55号にした。ゆったりしたシートでみていると、なぜか心地よくなり眠気がやってきた。

       花輪が乗ると、さくらが寝ていることに気づく。ヒデじいは話を終えて車へ戻る。

(花輪)     「さくらさんが寝てしまったから、このまま自宅へ送りましょう」

(ヒデじい)   「はい、おぼっちゃまはやさしいですこと」

       といい、車を発進させた。

ハマジとブー太郎はお菓子を買ってもらい礼をいい店を出た。

たまえも買ってもらうとお礼をいった。そしておばあちゃんたちは店を出た。

たまえは外を見て車がないこと知る。まるこはどこへいったのかと辺りを見渡す。花輪に送ってもらったのかと思った。でもなぜ声を掛けてくれないのかと不思議にも感じた。

(たまえ)    「あっ、まるちゃんのお菓子を買ってなかった」

       まるこから渡されたとき、自分のを詰めるため置きっぱなしにしたのだった。

       申し訳ない気持ちだが、ほったらかしにされたこともあり、まあいいか、と自宅へ帰る。

       まるこはサイフを拾ったというのにお菓子を買い忘れ、なおもコントもまともに見られなく、ただ高級車で家まで送られるという豪華な結果となったのだ。

       野口は菓子を買ってもらわなかったが、彼女なりにコントを丸々見れて喜んでいた。

(野口)     「やっぱコント55号は最高だね、キュキュキュ」

 

 

 

                                     (完)



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どんなでしたか。感想をお待ちしております。


では次回に… 


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